♪さいた、さいた、チューリップの花が♪ 淳子さんが耳元でささやくと、
♪ならんだ、ならんだ、赤白黄色♪ とお母さんが口ずさむそうです。
淳子さんは94歳のお母さんを介護しています。
10年ほど前から車椅子生活になり、そのころは車に乗せて毎日のようにドライブに連れ出していました。
徐々に認知も進み娘である淳子さんも忘れがちになり、最近は寝たきり状態になりました。
寝てる時間が多くなり、誰かと会話する、という事は無くなりましたが、歌を耳元で呟くとそれに反応するのだそうです。
三度の食事はゼリー状の食品を経口的に摂取し、週に二回デイサービスを利用して入浴をし、日常生活は彼女が、それはそれは細やかに世話をするので、常に清潔が保たれています。
このような介護生活を淳子さんはもう20年以上続けています。
お母さんの前はお父さんを手厚く介護して看取りました。
彼女はご主人との生活も大事にして、三食の食事はご主人と取るために一日三回車で
15分程離れた実家と自分の家を往復するのだそうです。
彼女の実家はお母さんと弟さん一家三世代が暮らしています。
年老いた母の尊厳を守り、愛情にあふれ、骨身を惜しまない淳子さんの介護の後姿を
見ている年若い孫たちにも天使のような介護は受け継がれていく事でしょう。
天使のような淳子さんに介護されたお母さん、天使のような介護をした淳子さん、どちらも幸せですね。
人間の幸せを淳子さんに教えられました