2023-01-01から1年間の記事一覧

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                                  

帰郷 沖縄 6 一家は那覇から東京に飛び、瑤子の実家に向かった。 看護婦をしている妹の路子に手紙で事情を伝え産婦人科の医者を紹介して貰っていたので、すっかり手はずは整っていた。 アンディと瑤子は早速、路子に紹介された産婦人科にエミイを連れて行っ…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                                   

帰郷 沖縄 5 ある晩、エミイとポールを連れて映画を見に行った瑤子夫婦は、そこでワイフ同伴の ホーキンス少佐と出会った。 瑤子が家族を紹介すると、少佐は、瑤子が軍政府で働いてくれて喜んでいる、と アンディに言った。 「たいしたこともできないで」と…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                                   

帰郷 沖縄 4 沖縄の生活が半年ほど過ぎた後、船で知り合ったミスターレイに、あんたほど英語ができたら、Civil Service(国家公務員)の試験を受けると良い、と言われ、瑤子はまず最初に、那覇のタイプの学校に四ヶ月ほど通って資格を取り、すぐ、事務員兼タ…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                                   

帰郷 沖縄 3 エミイがまた島中をほっつき歩き始め、沖縄の中高学生と屯して沖縄の警察に保護されたり、兵隊とオーフリミットの場所でMPに捕まったりすることが絶えなかった。 瑤子が特に心配したのは、彼女が妊娠しはせぬか、ということであった。 父親も…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                                   

帰郷 沖縄2 横浜で一時下船を許されたオハラ一家は、早速タクシーで寿司屋に行った。 母が昔チラシと呼んでいた、甘辛く煮付けた干瓢や椎茸と、紅生姜、錦糸玉子、が入ったものを期待した瑤子はチラシを六人前注文した。 目の前に出された、生魚がいっぱいの…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                            

帰郷 沖縄1 翌日の早朝、オハラ一家は西に向かって出発した。 アンディが朝鮮に行く前に買った、後ろに荷台がついた中古のフォルクスワゴンの ヴァンが、彼らをカリフォルニアまで運ぶ車であった。 時は1965年の春であった。 道中、アラバマを通過した時、…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                              

道ならぬ恋 ジョージア州 21 明日出発という夜、瑤子は頼子の家に行って洗濯をして来る、と家を出た。 グリーソンは仕事でおらず、洗濯を終えて暫く頼子と話しをした後、最後の別れを告げてその家を出た彼女は、真っ直ぐ家に帰らず、途中の工場に車を着けた…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                         

道ならぬ恋 ジョージア州 20 グリーソンは、瑤子を沖縄に連れ去ろうとしている、アンディを罵った。 しかし、やがて諦めて、二年でも三年でも待っている、と言った。 瑤子のもとに帰って来たアンディは、相変わらず優しく彼女を抱擁した。 子供達も久しぶり…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                              

道ならぬ恋 ジョージア州 19 頼子にはなんと言うの、と聞く彼女に、任せておけ、と彼は自信ありげだった。 実際、彼は、オハラの土地を自分も見たいから、と頼子に言ったのだ。 当日の朝、彼は瑤子と共に長距離バスに乗り込んだ コロンブスからネープルス、…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                      

道ならぬ恋 ジョージア州 18 瑤子の隣の小さな家に、八十代の老婆と五十代の看護婦の娘、それに、家政婦の、これまた五十代の女が住んでいたが、五十女たちは、たまにビールを瑤子におごってくれたりして、親しい付き合いがあった。 彼女等は、グリーソンと…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                      

道ならぬ恋 ジョージア州 17 グリーソンは、しばらく姿を見せず、電話もかけて来なかった。 寂しさに堪り兼ねた瑤子は、工場に行って彼の車の脇に車を止めて待っていると、相変わらずニコニコと小躍りして来る彼の姿が見え、彼女も思わず、ニッとした。 何事…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                       

道ならぬ恋 ジョージア州 16 それからまるで自然の成り行きのように、瑤子とグリーソンが結ばれるのに時間はかからなかった。 二人が結ばれた時の歓喜と恐ろしさを思い、瑤子は長い間、悩み抜いていた。 しかし次第に、彼女の世間に対するわけの解らぬ反抗、…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                       

狩猟 ジョージア州 15 アンディに朝鮮行きの命令が下った。家族を連れて行けぬ駐屯は十三ヶ月間となっていた。 瑤子はもう取り乱さなかった。彼女には相談相手になってくれるグリーソンがいた。 クソ食らえ、が口癖の彼は、何事もそれで済まして平気な顔であ…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                       

狩猟 ジョージア州 14 「ホラ、行くぞ」と舌を鳴らし、犬を連れて歩き出したグリーソンの後ろに、彼女は夢遊病者のように従った。 歩きながらグリーソンは、相変わらず冗談混じりに、スラグとバードショットの違いを説明したり、ウサギの頭を吹っ飛ばした“豪…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                       

狩猟 ジョージア州 13 広い野原の中では彼女の悩みなどほんの些事に思え、地平線まで続く原野の中で彼女の心は解き放され久しぶりに味わう開放感だった。 やがてグリーソンが車のトランクを開けて放した二匹の犬は、暫くピンと立てた尾を振り振り、雑木の繁…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                       

狩猟 ジョージア州 12 就職した牛乳会社で、始めはトラックの運転手として働いていたグリーソンは、やがて夜間の管理人になり、夜の十一時から朝の八時までの勤務になった。 一時間ごとに工場内を見回って異常の有無を調べる仕事は、ほとんど場内を歩き回る…

Mrs Reikoの 長編小説   戦争花嫁                

狩猟 ジョージア州 11 家の修理を終えた彼は、庭に小さな畑を作り蕪の種を蒔いた。 蕪の葉は青々と茂り、その葉を摘むことが瑤子には小さな喜びであった。 蕪はアメリカ南部ではその根より葉のために栽培され、冬の野菜としてどこの家でも作られていた。 種…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁     

狩猟 ジョージア州 10 グリーソンがミシシッピーから出て来た理由を打ち明けた。 彼が仲間と狩猟していた時、誤って農家の豚を撃ち殺してしまった挙句、裁判沙汰になりそうになったので、その前に逃げて来た、というのが、彼の言葉であった。 気性の荒いミシ…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁     

障害児の娘 ジョージア州 9 アンディが発ってから一月ほどして、就職したけれど、家族を迎えに行く金を貯めるまで、暫く置いてくれないか、とグリーソンから電話で頼まれた。 それまでいた友人の家に居辛くなったのであろう、と瑤子は快く承諾して、また彼の…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁     

障害児の娘 ジョージア州 8 相談する人もいない煩雑な毎日に疲れた瑤子は、だんだん世間に対して反抗的になっていった。 エミイがトラブルを起こす度、日本人だから礼儀知らずだ、とか、無知だとか、親が批判されるのが、瑤子には堪らなかった。 人の良いア…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁     

障害児の娘 ジョージア州 7 知能が遅れている子供たちを集めたその教室では、子供たちがそれぞれ勝手に教室内を歩き回ったり、ティシュで花を作ったり、レコードを鳴らしたりして、纏まりがなく、これではただのベビーシッターだ、と瑤子は不満であった。 瑤…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁       

障害児の娘 ジョージア州 6 その間にも彼は看護兵として、度々二週間、一ヶ月と、演習に行く歩兵隊について 行かなければならなかった。 それでも、ようやく一応人並みになった家に飽き足らず、ある日彼は、道で見かけた作業中の土木業者と契約して、台所と…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁       

障害児の娘 ジョージア州 5 日本を出た時、あのように利発なエミイの障害の原因を、瑤子はいろいろ考えてみたが、ヴァージニアに来たばかりの時起こした、高熱のためのひきつけしか考えつかなかった。 エミイは少し離れたダウンタウンの、特別教室がある学校…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁       

障害児の娘 ジョージア州 4 二年生になったエミイの成績は芳しくなく、読み書きは一応できるが、算数が一切ダメだった。 焦った瑤子は彼女が学校から帰ると、テーブルにボタンを置いて“一足す一”から教えようとした。 算数の原理を理解することができない彼…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁       

障害児の娘 ジョージア州 3 グリーソン家に三日泊まった後、オハラ一家は彼に教えられた家を借りることにした。 今でいう二LDKで、家の前後に少しばかりの庭があり、アンディは早速手押しの芝刈り機を買って来た。 エミイは二年生、ロバートは幼稚園児に…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁       

障害児の娘 ジョージア州 2 彼らは真っ先に知人のグリーソン曹長の家を訪ねた。 グリーソンも妻の頼子も日本からの顔見知りであった。 彼らとオハラ夫婦は趣味も違い、その頃は本当に顔見知り程度であったが、コロラドに住んでいた友人夫婦に、彼らの住所を…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁

障害児の娘 ジョージア州 1 一年間の講習を終えたアンディに、ジョージア州のフォートべ二ングに勤務するよう命令が出た。 とうに売り払ったウィリスの代わりに買った二台の中古車、ジープ、ステーションワゴンと、シヴォレーの二ドアを持って移ることにな…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁

再びコロラド州 3 ポールを連れて退院してから、相変わらず子供たちの世話に明け暮れしていた瑤子は、ある日新聞で、“ハイスクール卒業免状獲得”という広告を見て、早速電話した。 中年の男が訪ねて来てコースは全部で140ドルだ、と言った。月賦の嫌いな瑤子…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁

再びコロラド州 2 五月ニ日の早朝、普段のように身支度したアンディは、産気付いた瑤子と三人の子供たちを車に乗せて病院と託児所に向かった。 産室に一人入れられた瑤子に、「今、痛みは何分おきか、」と医者がちょいちょい部屋に来て尋ねた。 目前の壁に大…

Mrs Reikoの長編小説  戦争花嫁

再びコロラド州 1 アンディは、フォートカールソンには戻らず、デンヴァーのフィツモンズという大きな陸軍病院に、本格的な看護兵の資格を取るため、配属になった。 一年講習を受ければ特別手当も出るという、相当難しい勉強に取り組むことになったのだ。 そ…